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ところが(昨日の続きです)、高校の先生が次の例文を板書し、その2つの違いを説明したところで、当時の私の感動の中にちょっとした疑問が湧き上がった。その例文というのは、下の(1)(2)である。 (1)I have five sons who have become lawyers. 「弁護士になった息子が5人います」 コンマがない用法だと、「弁護士になった息子が5人いること」がわかるだけであって、他にも6人目7人目の息子がいるかもしれない。6人目は医者になったかもしれないし、7人目は大学教授になったかもしれないのである。 (2)I have five sons, who have become lawyers. 「5人の息子がいます。息子たちは弁護士になりました」 コンマをつけると、「息子は5人だけ」とまずわかり、しかも「5人全員が弁護士になった」ということになる。だからコンマは意味上とても重要であり、「コンマがなかったら後ろから訳せ」「コンマがあったら前から訳せ」。これは「今学期の最重要事項」。先生はそう説明した。どこの高校でも、だいたい同じような状況だろう。 ![]() (写真上:どんな酒でも、難しいことは言わないクマどん。呆れて横たわるニャゴどん) もう大昔のことだが、高校生の私の釈然としない気持ちは今でも記憶している。スタートは「ええっ、5人も息子がいるの? 変な例文だねえ」という感想だった。「しかも、5人全部が弁護士? いやな家だねえ」というのもあった。 「いまどき、5人も息子がいることだけでも驚きなのに、6人目7人目がいる可能性があるって? スゴくない?」 「一郎、次郎、三郎、四郎、五郎、それだけでも十分にスゴいのに、六浪、七浪、八浪?」 「永六輔(そういうタレントがいた)、深沢七郎(そういう作家がいた)、春日八郎(そういう演歌歌手がいた)、源九郎義経(そういうヒトがいて、モンゴルでチンギスカンになって、その子孫が「品格なき横綱」といって漫画家にイジメられている)?」 「でも、そんなに子だくさんなヒトなのに、なんだか大人しいねえ。5人6人7人も息子がいるほどのエネルギッシュなヒトが、コンマ1つに奥ゆかしい含蓄を込めて、相手の顔をじっと見つめていたのかねえ」 「相手も、チョー、大人しいよね。5人のムスコ、というところで、普通は驚くんじゃないの? 5人も息子がいるんだって聞いたら、普通、ビックリすんじゃネ? オカシクね? チョー、オトナシしぎるんじゃネ?」 「アメリカ人なら、もっとハゲしく驚いて、もっと会話するのが普通じゃないの?」 つまり、たった1行の英文をこうやってこねくり回して、1行の英文で状況を判断しようとするからいけないのであって、2人の間で積極的に質疑応答をすれば、別にコンマ一つの有無で「ああだ、こうだ」と大騒ぎしている必要はないのではないか。当時の私が考えたのは、そういうことである。 ![]() (写真上:少しでも難しい話になると、いくらでも眠くなるニャゴ姉さん) 例えば、NY・ブルックリン在住のハワード(68歳)が、地下鉄で河の下をくぐってやってきたSoHoのイタリアンレストランでこんな発言をしているところを、想像してみたまえ。 「I have five sons(,)who have become lawyers. さて、私のムスコは5人でしょうか(コンマありの場合)、それともムスコはもっといるんでしょうか(コンマなしの場合)。さあ、私の今の発言は、コンマをつけた非制限用法でしょうか、それともコンマなしの制限用法でしょうか。わかりますか?」 ハワードが、両手をすりあわせ、目を潤ませながら、相手の返答を待っている様子が想像できるだろうか。そんなバカなことは、100%ありえないんじゃないか。そんなことをしているより、「5人だけです」「いや、6人目もいるんです」とズバッと発言するんじゃなかろうか。 ![]() (写真上:マッジョーレ湖から、モッタローネへ。どんどん高くなり、どんどん揺れが大きくなる) 聞き手の側も同じである。40代のキャリーとミランダとシャーロットと50歳になったばかりのサマンサの4人組が、隣のテーブルのハワードの発言を小耳にはさんだとする。朝から4人でヒソヒソ顔を近づけあって、 「ハワードの『ムスコ』って?」 「サマンサ、朝から激しすぎる発言はやめなさいよ。弁護士になった5人のムスコ、って言ってたでしょ。6人目も7人目もいるの? 6人目がドクターなら、アタシのターゲットかも」 「えっ、バカね、キャリー。オジさんは、5人のムスコ、の後にコンマをつけたでしょ。コンマがあるんだから、ムスコは5人。ドクターになった6人目、なんて言うのは妄想よ。妄想につかれたヒトには、コンマが聞こえないの。」 「ウソぉ。コンマ、ついてたっけ。シャーロット、ついてなかったわよね」 「ついてたような、ついてなかったような」 「あいかわらず、無責任」 「だって、コンマって見えないでしょ」 「だいたい、私、弁護士はキライ」 「ムスコ、ねえ」 「サマンサ、何考えてんの?」 「聞いてみる? その方が、早いでしょ?」 「やめときなさいよ、変な人かもよ」 「いいって……あのぉ、すみません。今、five sonsの後ろに、コンマつけました? 非限定用法? それとも、コンマなしの限定用法? どっちなのかで、6人目のドクターにこのヒトが…」 「サマンサ、いい加減にしてよ。」 「いいじゃん、キャリー。恥ずかしがる年でもないでしょ。」 という感じ。 ![]() (写真上:ロープウェイからのマッジョーレ湖。運が良ければ、ミラノに降りていく飛行機の窓からも同じような光景が見られる) 今も昔も、高校の英語教育では、コンマ1つについて、こういう会話やこういう悩みを想定して授業を進めていることになる。高校生だった私は、すっかりムクれ、すっかり不信感のトリコになり、先生も教科書も参考書も、みんな滑稽きわまりないものに見えてきた。「こんなの、最重要事項なはずがない」「こんなの、期末テストで出題する先生はキライだ」「こんなのが出るなら、東大なんか行ってやらない」。というわけでその瞬間に私は東京大学を心から軽蔑し(もちろんウソ)東京大学なんかに行くぐらいなら死んだ方がマシだと考えて(もちろんウソ)、偏差値はいつでも95以上あったのだが(もちろんウソ)、あえて早稲田大学を選んで、在野精神でコンマを生涯の攻撃対象に選んだのである(もちろんウソ)。 1E(Cd) Incognito:BENEATH THE SURFACE 2E(Cd) Incognito:100°AND RISING 3E(Cd) Incognito:LIFE, STRANGER THAN FICTION 4E(Cd) Incognito:FUTURE REMIXED 5E(Cd) Incognito:ADVENTURES IN BLACK SUNSHINE 6E(Cd) Incognito:WHO NEEDS LOVE 7E(Cd) Incognito:NO TIME LIKE THE FUTURE 10D(DvMv) CARS 13D(DvMv) THE ARISTOCATS total m237 y1324 d1324 |
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